2019/08/07
統計的データ分析>渋野日向子のリストの使い方について
渋野日向子が快挙を成し遂げた。USPGAでも有望な新人が次々と出てきている。デビューして間もなく優勝したコリン・モリカワとマシュー・ウルフをはじめ、2018年のUSアマを取ったビクター・ホブランドなどとにかく新しいスターが目白押しだ。
これらの新人に共通する、ゴルフ好きなら気になっている人が多いと思われるバウドリストについて分析してみた。
バウドリストはDJ、ケプカ、ラームが代表例で、トップポジションで左手首を地面方向に折るスタイルのことを言う。上で挙げた4人のスターもこの癖を持っているのだ。渋野選手はトップではストレート、ウルフはむしろ逆に折るカップドリストスタイルだが、実は切り返しでバウドリストさせていくのだ。DJ、ケプカ、ラーム、モリカワ、そしてホブランドはトップポジションですでにバウドしているのだが、渋野選手、ウルフは切り返しからバウドさせていく。ではトップからバウドさせている場合と切り返しからやるのでは何か違いがあるのだろうか?後者は手首を折ることを切り返しの予備動作、きっかけにしているというぐらいで、結果インパクトでの形にどちらのスタイルも変化はないと理論上言える。そしてほとんどのこのバウドリストを使う選手はヘッドスピードが速くそもそもの身体能力が高い選手が多いというのが特徴だが、今回渋野選手のこの動きを見て私は正直驚いた。女子でこのバウドリストを使う選手は男子に比べ極端に少ない。その理由は早い段階でフェースをシャットにし、フェースローテーションを抑えるため、球筋が安定する代わりにハンドファーストのインパクトがマストとなり、パワーがない限り球があがりにくいからである。さらにフェースローテーションを抑えるのでヘッドスピードも落ちる傾向にある。この条件の中、女性である渋野選手がバウドリストを使っているというのはやはりデータを取り続けてきた私には驚きだった。全英女子最終日の12番ホールで250ヤードほどキャリーさせ、パー4でのワンオンを可能にしたパワーを持つ渋野選手だからできるこのリストの使い方なのだと言える。
最近多くみられ、トレンドのように感じるがこのバウドリストは良いのだろうか?メリット、デメリットを下記にまとめた。
〇メリット
―球筋が安定しやすい
―ダウンスイングでシャロ―になりやすい
〇デメリット
―球が上がりにくい
―ハンドファーストでインパクトできないと左にミスしやすい
―距離が落ちる
―よほどのパワーがないとフェードかひっかけにしかならない

最近注目を浴びているGGスイングではバウドリストについては触れられてないが、シャロ―イングを強く推奨しており、このバウドリストはシャロ―なダウンスイングを誘発しやすい点においては良いと言えるだろう。スイングデータ分析の結果でもシャロ―なダウンスイングにはかなりの優位性がみられるため、そういった意味では大いなメリットと言える。
ただ大きな問題がある。やはり、圧倒的なパワーがないといけない点だ。相当なヘッドスピードがない限りこのバウドリストを使うとデメリットが上回ってしまい、普通のアマチュアには推奨はできない。
渋野選手のようにキャリーで250ヤード飛ばせるようなベースが最低限必要だろう。
ただ、どうしても試してみたい方がいるなら1つのポイントを変えればバウドリストが使える可能性を上げられる。それは女子では極めて珍しいこのバウドリストを渋野選手が使いこなしているための重要なポイントでもある。左のグリップの握り方だ。DJも同じように握っているのだが、かなりロングサムでグリップするということだ。ロングサムで左手をグリップしたらショートサムでグリップするよりもバウドリストの影響がクラブに出づらくなりシャットフェースの度合いが減り、球も上がりやすくなるのだ。多少ヘッドスピードが足りなくても使いこなせる可能性はあげることができる。ロングサムができない人はウルフのようにウィークグリップにしてやれば良いだろう。ただ、この方法の方がかなりの違和感がでること間違いなしである。
ほとんどの女子プロがストレートか、バウドの逆に折るカップドリストを使っていることから分かるように、力のないアマチュアにはやはりストレート、もしくはカップドリストが良いということがデータ科学的には結論づけられる。
最後に、渋野選手42年ぶりの快挙おめでとうございます。今後も本当に楽しみです。

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2019/07/29
統計的データ分析>佐々木朗希の起用について
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